\chapter{序論(サンプル)} 本論文は機械学習とLEDを用いた自転車の挙動認識結果を後方から接近する車両に知らせる事で危険回避を行うシステムについて論ずるものである.第一章では本テーマを取り巻く背景と世の中に存在する危険回避のためのインタラクティブシステムの紹介,そして今回提案する危険回避システムについての提案手法等を含めた本研究の目的を説明する. \section{背景} 近年,自転車の利用者が増加傾向にある,特に都市部で顕著に表れている. その背景としては,エコや健康意識の高まりに加え,2011年3月に発生した東日本大震災後に公共交通機関が麻痺し,帰宅難民となった経験等が危機意識を高め,通勤通学における自転車の利用に拍車をかけている.この様に自転車の利用者は増加しているが,\tabref{road_table}にしめすように自転車専用道路等の整備が十分になされておらず,快適なサイクリング環境とは程遠いのが現状である\cite{kokudo}.具体的には,自転車が車道を走る際,問題となるのが後方から接近する自動車の存在である.自転車にはバックミラーやサイドミラーが装着されておらず,後方の自動車の存在に気付き辛い側面がある. 例えば,路上駐車中の自動車の追い抜きを行う際に自転車は後方を確認する必要があり,自転車の運転者には負担になる.特に都市部において,路上駐車が多く,この様な場面に出会うことが多々あり,この様なことから自転車を操作する運転者の負担が多くなると考えられる.また,後方から来る自動車の運転手はこの様な状況下において,自転車の行動(例えば,自転車は追い抜きをするのか,しないのか,または自動車の存在に気付いているのか等)を判断しづらく,両者にとって非常に危険である.また,横方向からの歩行者又は車両の飛びだしにより,走行中の自転車が急激にハンドル操作等を行った際も同じく両者にとって非常に危険である. \begin{table}[ht] \centering \caption{欧米諸国と日本における自転車道の普及率} \label{road_table} \begin{tabular}{cccccccc}\hline & & \bf 自転車道の & \bf 総道路延長に & \bf 国土面積当たり& \bf 千台あたり & \bf 千人あたり &\ \\ \bf 国名 & \bf 年& \bf 延長 & \bf 対する割合 & \bf の延長 &\bf の延長 &\bf の延長 & \\ & \bf & \bf (km) & \bf (\%) & \bf (m/km${^2}$)& \bf (m/千台) &\bf(m/千人) & \\ \hline オランダ & 1985 & 14,500 & 8.6 & 349 & 1,317& 900 & \\ ドイツ & 1985 & 23,100 & 4.7 & 65 & 660 &280 & \\ 日本 & 2006 & 7,301 & 0.6 & 19 & 84 &57 & \\ \hline %Gap Time between Strokes & Long & Short \\ \end{tabular} \end{table} \section{実世界におけるインタラクションシステム} 現在,我々の住む世界では様々な手段を用いて意思の伝達を行っている.我々が用いている伝達手段として最たるものは言語である.しかし,言葉が伝わらない環境下ではどうだろうか.言葉が届かないほど遠い相手に意思を伝える場合や同じ空間にいない場合の意思伝達を行う場合において言葉を使用することはできない. そこで人々はこの様な状況下における伝達方法の一つとして光を使用した伝達方法を用いている.例えば車のウィンカーやブレーキランプ,そして夜間における船舶同士または航空機同士の衝突を回避する為に点灯するポジションライト等が挙げられる.佐々木ら\cite{meta}は自動車メタファを用いて歩行者同士の接触を避けるためにLED等のデバイスで歩行者自身の動きの情報を周囲に知らせるシステムの手案を行っている.またWalminkら\cite{luma}はLEDを内蔵したヘルメットを装着し,自転車走行中に曲がりたい方向などにヘルメットを傾けることで,その動作に対応したLEDが点灯し周囲に行動の内容を知らせることができるシステムを提案している. \section{本研究の目的} 本論文では,加速度センサ使用した自転車の挙動認識をリアルタイムに行い認識結果を後方の車両に伝えるCyclesportsの提案,評価を行う.挙動認識に用いる加速度センサはスマートフォンに搭載されているものを使用する. スマートフォンを利用する利点としては,現在この様な電子機器の普及は目覚ましく,将来的にシステムを実装する際に,アプリケーションとして配布することで,特別なセンサ機器等を必要としない.これらの理由よりシステムの普及が比較的容易に行えるのではないかと考えたからである. よって我々は自転車にスマートフォンを装着し実験を行うことで自転車の挙動認識を行う.しかしスマートフォンを自転車に実際に装着すると地面の凹凸や走行風,自転車運転者によるペダリング等ノイズがある. 通常これらのノイズをカットするために用いられる方法は,入力データに対してフーリエ変換やウェーブレット変換を行うことでノイズの除去を行う方法が用いられている\cite{fourier}\cite{wavelet}. しかし,自転車は運転者の動きの自由度が高い事やペダリングの動作が含まれること等の理由により,ノイズと自転車挙動加速度データの分類は困難であり,周波数を用いた前述のフィルター類を使用すると必要なデータも落としてしまう可能性があると考えた.これらの理由から,我々はスマートフォンの設置位置を検討することでノイズの影響を限りなく受けにくい場所を特定し,その場所にスマートフォンを設置しデータ収集を行った.我々はCyclesportsの開発,実装を行う為の基礎研究としてデータ収集アプリケーションを実装した. このアプリケーションは50hzの周期で3軸加速度データをCSV形式でスマートフォンの内部メモリーに保存し,実験終了後にサーバーへデータ送信を行うことができる.この方法でサーバーに送信された3軸加速度データは時間窓が適用され,この時間窓をスライドし特徴量を算出し,挙動認識を行うために機械学習を用いた分類を行う. 我々は機械学習の分類器の選定を行う為にK近傍法とサポートベクターマシンを比較し,どちらの分類器が自転車の挙動認識に適しているのかを検討するとともに特徴量が多い事で分類モデルが不安定になる可能性があるため,どのパラメータが認識に必要ようか主成分分析行い,使用するパラメータの選択を行った.我々はこれらの結果を基にCyclesportsの開発,評価を行う. %図入れ方法 %\begin{figure}[h]%配置する位置を表す記号は,h(ここ),t(上),b(下),p(独立ページ) %\begin{center} %\includegraphics[width=14cm]{img/KJ.png} %\caption{KJ法の手順} %\label{kj} %\end{center} %\end{figure}